国際取引の客体についての準拠法決定の必要











各国法の下において、国際取引の客体につき、物権、債権、または知的所有権が成立するということは、ほぼ共通している。
しかし、その内容については、各国異なっている。
従って、具体的な国際取引の客体について、その権利または義務の成立、変動または消滅が問題となった場合、
その判断の基準となるべき法として、どの国の法を選択すべきかという、準拠法の決定の必要性が生じる。(国際取引法要説より抜粋)



















物権
所有権の準拠法



(1)日本

物権に一種類である所有権の準拠法は、目的物の所在地法である。
所有権の対象が動産または不動産であることにより準拠法を区別せず、統一している動産、不動産統一主義(同則主義)である。


(ア)所有権の成立、内容、効力
  @所有権の対象となり得る物は何か
  A動産、不動産の区別、主物、従物の区別等
  B物権的請求権


(イ)所有権の得喪変更(物権変動)
  @法律行為による物権変動
  A法律行為以外の事実(事項、混同など)による物権変動









(2)ニューヨーク
目的物と当事者に最も密接な関係を持つ国の法によるのが原則であるが、その最も密接な関係を持つ国の法は、
目的物の所在地法と解されることが多い。








(3)ロンドン
目的物の所在地法による。 (国際取引法要説より抜粋)


















目的物の所在地
国際的に常時移動する船舶・航空機






目的物の所在地は、目的物の物理的な所在地を指すので、通常、その決定には問題を生じないところである。
しかし、国際的に常時移動する船舶・航空機では、国の法も適用されない公海や公海上の空域に所在する場合には、
所在地法なく、準拠法が決定できないという場合が発生することから、特別な取り扱いが行われる。
旗国法と登録地法とが一致しない場合については、登録地法によることに学説は一致している。(国際取引法要説より抜粋)



























債権、債務








国際取引においては、有体物とならんで無体物が取引の対象となるが、無体物の中で主要なものは債権である。
債権が取引の対象となった場合には、当事者間の債権の譲渡についての合意により債権が移転することになり、債権譲渡といわれる。


                      債権譲渡:当時者間の合意による債権の移転
国際取引における債権の移転ー
                      代位   :法律の規定による債権の移転






債権譲渡:
合意による債権の移転


国際取引においても、国内取引同様に、債権者が譲渡人となって、その有する既存の債権や将来の債権を譲受人に
売却譲渡人する場合がある。業として売掛債権を買取り、債権譲渡を受ける者をファクター(Factor)、こうした売掛債権の譲渡による
資金調達方法をファクタリング(Factor)と称している。



日本においては、譲渡の対象となる債権の譲渡(可能)性の問題は、その債権の効力の問題として、
債権の効力の準拠法によることについては、学説で一致している。


ニューヨークでは、譲渡の対象となる債権の譲渡(可能)性については、その債券の準拠法による。



ロンドンでは、譲渡の対象となる債権の譲渡(可能)性については、その債券の準拠法によることは先例が確立している。
また、債権譲渡行為の成立と当事者間の効力の準拠法については、譲渡行為自体の準拠法による。(国際取引法要説より抜粋)













次に代位:法律による債権の移転について説明しよう。




























法律による債権の移転
保険代位

保険者が被保険者との保険取引に基づき、被保険者の受けた損害を被保険者に保障したことにより、
被保険者が受けた損害につき被保険者に対して損害賠償責務を負う物に対する損害賠償請求権が、
被保険者より保険者に法律の規定により移転するか、移転するとすればその要件や効力といったことが問題となり、
その判断基準となる準拠法の決定が必要となる。









                          (海上保険契約)



保険者                          →                    被保険者(荷主)

                            損害補償


                            保険代位
                                       損害賠償      (海上物品運送契約)

                                        請求権


                                                    積荷への損害




                             運送人












(1)日本
代位の準拠法については、国際私法に明文の規定がないので、条理によらなければならない。
保険者に基づき被保険者により移転するか否か、すなわち保険代位が成立するか、またその効力がどうなるのかは、
代位の原因である保険契約の法的効果にほかならないから、保険契約の準拠法によるのが、
条理であるとするのが通説である。また、裁判例にも、通説と同主旨のものがある。



(2)ニューヨーク
保険者による被保険者に対する保障行為に最も密接な関係を有する法。
すなわち保険保険契約の準拠法によるこよになる。



(3)ロンドン
保険代位が成立するか、また、その効力がどうなるかは、代位の原因である保険契約の法的効果にほかならない。
よって、保険契約の準拠法による。(国際取引法要説より抜粋)















次に有価証券 有価証券の種類について説明する。




























































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